1. KAWASHIMA Stories
  2. CULTURE
  3. 夏にひんやり 雪を表す吉祥文様 ”雪輪文”  雁金屋「御用雛形帳」にも

夏にひんやり 雪を表す吉祥文様 ”雪輪文”  雁金屋「御用雛形帳」にも

夏にひんやり 雪を表す吉祥文様 ”雪輪文”  雁金屋「御用雛形帳」にも

雪輪(ゆきわ)の文様をご覧になったことはありますか?
雪の結晶が文様化されたもので、雪は春の豊富な雪解け水を意味することから ”豊作をもたらす” と、吉祥文様のひとつに数えられる文様です。

TAG

涼をとる工夫

記録的な暑さが続いています。少しでも快適に夏を乗り切るため、どんな工夫をしていますか。近年では様々な冷感グッズが開発され、お使いの方も多いことでしょう。また「クーラーの効いた部屋で味わうフワフワかき氷」は、想像しただけでも最高のクールダウンアイテムですね。
では、ひと昔前までは、どのように涼を取っていたのでしょうか。

ただ暑いだけでなく、盆地ならではの蒸し暑さが際立つ京都の夏には、昔から涼を取る知恵や工夫がたくさんありました。例えば、京都の町屋は「うなぎの寝床」と言われる細長い家屋ですが、襖(ふすま)を簾戸(すど / 簾(すだれ)をはめ込んだ建具)に替え、網代(あじろ)に編んだ籐(とう)の敷物を敷き、夏座敷にしつらえを替えます。家の表には打ち水をし、気化熱を利用して発生させた涼しい風を、坪庭と呼ばれる中庭との気圧差を利用して、家の中に取り込みます。その坪庭の軒先には音で楽しむ風鈴。三角に切った外郎(ういろう)を氷に見立てたお菓子「水無月(みなづき)」。湯上りの浴衣に団扇で夕涼みなどなど、衣食住のすべてに涼を取り入れてきました。

夏の衣装に雪輪

中でも着るものは、季節を先取りした文様(デザイン)を用いることで、涼を目で感じることができます。夏に用いる季節を先取りした文様と聞いて、何を思い浮かべますか。よく使われるのは、より涼しさを感じるために秋を跳び越し冬をイメージさせる雪のデザイン、それもただの丸ではなく、よりフワフワ感が出るようにデザイン化された「雪輪(ゆきわ)」です。もちろん冬にも季節を表すものとして良く使われる文様ですが、夏の衣装のデザインとしても良く見られます。

雪輪あれこれ 自由な雪輪が描かれた江戸時代

室町時代末期から戦国時代にかけて登場したこの雪輪。女性に劣らずおしゃれだった男性の衣裳にも用いられ、江戸時代初期には流行の最先端を行く文様の一つとなりました。そして、形は丸に切れ込みを入れたものが主流ですが、切れ込みの深さや数、丸みがあるものから鋭いものまで、多種多様に幾種類もの雪輪が自由自在に描かれました。 

当時の人々が雪をどう表現しようとしていたか、豊かな日本人の感性が伝わってくるようです。これらのさまざまなバリエーションが、現在のような鋭い切れ込みがあり雪の様子がよりイメージ出来る形に整えられていったと考えられます。

多種多様な雪輪文様

そして本来、雪輪は冬の雪をイメージした文様でしたが、その輪郭を活かして中に別の文様をいっぱいに詰め込み、一層豪華にデザインしたものや、逆に輪郭の一部を切り取って、大きな弧(こ)を描くように斬新な構図をつくりあげるなど、無限大の発想は、多種多彩な雪輪文様を生み出してきました。
例えば、夏の着物に締める絽の帯(最上部写真)。水の流れる様子を表した文様(観世流水)とあわせ涼しさを演出しています。また、雪輪の中に松や竹を詰め込むことにより、華々しさや豪華さを一層際立たせた昭和初期に製作した丸帯や、かなり大胆に柄を取ることで、より絢爛に柄を表現した江戸時代初期の小袖など、様々な雪輪の使われ方があります(いずれも川島織物文化館蔵)。

左:丸帯試織「雪輪に松竹」(昭和時代) 雪輪の中に松・竹・梅が入れ込まれている。
右:夏丸帯試織「雪輪芙蓉百合」(大正時代) 雪輪を地模様に使用。
左:「雪輪梅模様小袖」(江戸時代初期)
右:同部分 谷の字がある薄茶部分と黒地部分の輪郭線が雪輪の一部になっている。

小袖に見る雪輪 流行最先端 雁金屋「御用雛形帳」

そんな雪輪の、江戸時代初期の大胆な使い方を示す資料が、川島織物文化館にあります。当時、京都屈指の高級呉服商であり、尾形光琳の生家としても知られる雁金屋(かりがねや)の小袖注文帳控『御用雛形帳』(ごようひながたちょう)です。

『御用雛形帳』(寛文4・1664年)より 163番(右ページ)
金額や日付(10月)などの記載にあわせ、雪輪の部分は  ”浅葱(あさぎ)色(薄い藍色)の鹿子絞り(かのこしぼり)で表現するよう”  との指示書きが見られる。

東福門院和子も使った 雪輪

こちらは徳川秀忠の娘で後水尾天皇の中宮となり、当時のベストドレッサーとしても名高い東福門院和子(とうふくもんいんまさこ)が注文した小袖のデザインです。正装としてではなく、御所の私的な場で着ていたものと考えられています。
右ページは背中部分の柄で、雪輪が用いられています。「どこに?」と探してしまいますが、実は背面いっぱいに斜めに描かれた線は、幾重にも重ねた雪輪の一部です。よく見ると線も少しだけ湾曲していて、巨大な弧の一部が描かれているのが想像できます。また、規則正しく凹凸を繰り返し、あの雪輪のフワフワ感が表現されています。
仕立て上がりの小袖を想像して、ほんの少しだけ涼を感じてみて下さい。

御用雛形帳 を 公開中 
江戸東京博物館 特別展「大江戸の華―武家の儀礼と商家の祭―」

現在、この『御用雛形帳』が、江戸東京博物館(東京都墨田区)で開催中の特別展「大江戸の華―武家の儀礼と商家の祭―」で公開されています。開催期間中に行われる展示替えで、展示ページが変更される予定です。
川島織物文化館でもめったに展示しない貴重な資料です。機会がありましたら、足をお運びください。

会期開催中 〜 2021年 9月20日(月・祝) 
会場東京都江戸東京博物館 1階特別展示室
 東京都墨田区横網一丁目4番1号
開館時間9:30 ~ 17:30(入館は17:00まで)
休館日月(8月16・30日、9月20日は開館)
関連リンク 特別展「大江戸の華―武家の儀礼と商家の祭―」
その他※詳細は江戸東京博物館にお問い合わせ下さい。

川島織物文化館 ホームページ

NEW ARTICLE