1. KAWASHIMA Stories
  2. OBI
  3. 帯の種類 袋帯の基礎編 帯メーカーが徹底解説!

帯の種類 袋帯の基礎編 帯メーカーが徹底解説!

帯の種類 袋帯の基礎編 帯メーカーが徹底解説!

今回取り上げる「袋帯」は結婚式、披露宴やパーティーといったシーンで着用することが多いので、一般的には「袋帯=フォーマル」というイメージをお持ちの方が多いのかもしれません。
ですが、絵柄や素材によってはカジュアルシーンで締める袋帯もあり、着用シーンはフォーマル限定ではありません。今回は改めて帯メーカーとして「袋帯ってなに?」という疑問を解決していきたいと思います。
どうぞお付き合いください。

TAG

袋帯とは

袋帯はいつ締めるの? 袋帯のコーディネート例

袋帯は表地と裏地が筒状=袋状になった帯のことです。形に対してついた呼び名なので、着用シーンは様々ですが、一言にまとめて「袋帯」と呼ばれています。
お太鼓と呼ばれる一般的な結び方にした場合に背中の部分の生地が2枚に重なり、主にフォーマルのシーンを得意とする帯ですが、色柄や素材によってカジュアルシーンでも着用できます。
それでは、フォーマルシーンで袋帯をコーディネートした場合と、カジュアルシーンで袋帯をコーディネートした場合を比較してみましょう。

フォーマルシーンのコーディネート例

雅な絵柄が描かれたベージュの訪問着に合わせて、縁起の良い吉祥文様として好まれる雲文様に、能装束に見られる割付文様を配した袋帯を合わせています。
帯には控えめではありますが、金銀糸が用いられているのに加え、絵柄も着物と帯共に格調があることから、結婚式のゲストや、授賞式などのパーティーでも着用できるでしょう。

カジュアルシーンのコーディネート例

こちらのコーディネートは、 濃い地色の紋を入れない色無地 に、同じ袋帯でも「すくい織」と呼ばれるざっくりと織られた袋帯を合わせています。このような帯を川島織物セルコンでは「洒落袋(しゃれぶくろ)帯」と呼んでいます。
金銀糸を折り込まず、カジュアルな地風のため、趣味性の高い訪問着、紋の入らない色無地、小紋や紬などに合わせます。

袋帯でないといけないシーンってあるの?

絵柄や素材によって、合わせる着物や違うということ、袋帯の幅の広さをお判りいただけたと思いますが、「袋帯である方が無難」であるのはフォーマルシーンでしょう。ことに儀式と呼ばれる場では服装にも意味合いをもたせる文化がありますので、ある程度ルールを知って合わせていく必要があります。袋帯はそういったフォーマルシーンに欠かせない帯と言えます。
一方、普段に着る着物の世界ではルールにとらわれず、現在は若い人たちを中心に和洋ミックスなど新しい感覚の組み合わせが楽しまれています。同じ理由から、元々はフォーマルシーン用のものとして作られた帯を、カジュアルなシーンに締めることも、ご本人が素敵だ・楽しいと感じられるのであれば、自由にお楽しみいただくのが良いと、私たちは考えています。

もっと知りたい袋帯

形状について

もう少し形状についてご説明していきましょう。
冒頭で申し上げた通り、袋帯は袋状(筒状)の形をした帯のことを言います。現在、幅が約31cm程度、長さは約448cm(川島織物セルコン規格)で製作しています。
基本的に、表は柄があり裏は無地です。

仕立てる前の帯は袋状になっています。芯地を入れるなどして、口をかがって仕立てます。

本袋帯と縫い袋帯

基本的に表には柄があり、裏は無地になっている「袋帯」ですが、さらにその中でも「本袋帯」と「縫い袋帯」があります。一見、同じ形状に見えますが、製作段階や仕立ての段階では、呼び分けることが多いです。
一般的には「袋帯」で通用しますし、普段、使うことはあまりありませんが、販売店等で耳にされた時に思い出してみてください。

図の左が「本袋帯」とよばれるものです。はじめから袋状に織ったもので、縫いしろがないので、結ぶ時には圧迫感が少なく、型崩れしにくいのが特徴です。
図の右が「縫い袋帯」です。表地に別布を縫い合わせたもので、表地と裏地は同じ織組織の生地を合わせることが多いですが、裏面に絵柄がついている必要はないので無地であることがほとんどです。
現在、縫い袋帯の方が本袋帯に比べ生産量は多くなっていますが、当社では結びやすさや着心地などのメリットがあることから、主に本袋帯を生産しています。ただ、袋状に織り上げるのは、製織中にキズやミスなどの確認がしづらいなど、本袋帯を織り上げるには高い技術力が必要です。そのため織り技術者は、日々高い技術の習得に努めています。

袋帯と名古屋帯はどう違うの?

これまで、袋帯のバリエーションを説明してきましたが、実はお問合せの中で多いのが、「袋帯と名古屋帯ってどう違うんですか?」というご質問です。
簡単に説明をしますと、袋帯は名古屋帯より丈が長く、結んだ状態でお太鼓(背中の部分)の生地が二重になるので「二重太鼓」とも呼ばれ、フォーマルシーンで活躍するのに対して、名古屋帯は「一重太鼓」と呼ばれ、長さが袋帯より短いために、二重太鼓を作ることはできません。

袋帯名古屋帯
長さ長い短い
お太鼓二重太鼓一重太鼓
フォーマル

では、袋帯と名古屋帯の違いについて、①着た状態 ②仕立て上がった状態 ③仕立てる前の状態 の3つのシーンで違いを解説します。

着た状態 での違い

まずは着た時の状態の違いから見ていきましょう。
左が袋帯(二重太鼓)、右が名古屋帯(一重太鼓)です。お太鼓結びにした場合、一見すると同じ姿に見えますが、よく見ると赤い部分が違うのがお判りでしょうか? 長さが違うので、着用時にはお太鼓部分の生地の重なりに違いが出ます。これが「二重太鼓」「一重太鼓」の名前の由来になっています。
フォーマルシーンで袋帯を結ぶ方が多いのは、二重太鼓の姿に「喜びを重ねる」というような意味合いを持たせているからです。

仕立て上がった状態 での違い

仕立て上がりでの違いは長さで見分けましょう。袋帯は締めると二重太鼓になり、名古屋帯は一重太鼓になります。ですので、長さは袋帯の方が68cm以上長く織られています。
名古屋帯の仕立て方は「帯メーカーが徹底解説! 着物の帯の種類・名古屋帯編」でもご紹介している通り、手先と呼ばれる部分の仕立て方にバリエーションがありますから、長さで比較するのが一番見分けやすいポイントになります。

仕立てる前の状態 での違い

店頭では袋帯は畳んだ状態で陳列されていることが多いのに対して、名古屋帯は反物の状態で陳列されています。ただし、反物が巻いてある状態であれば着物用の反物も同じ形状なので、着物と帯を見分けたい場合は、幅を確認してみましょう。着物の反物であれば女性用は幅38cm前後、男性用は40cm前後です。名古屋帯の幅は31cm~35cmですので、それより広ければ着物の反物ということになります。(リユース着物の反物は38cm以下のものもありますので注意!)
わかりにくい場合は、お店の方に聞いていただくのが間違いありません。

袋帯に使われる素材

経糸の素材

織物は、経糸 (たていと) と緯糸から成っていますが、一般に袋帯の経糸には絹がメインに使われています。
川島織物セルコンでは、「佐賀錦(さがにしき)帯」という経糸に箔を引いた和紙を使った帯もあります。また、一部では洗える帯として、ポリエステルなども用いられています。
織物も進化していますので、今後もさまざまな素材が織り込まれていく可能性もあります。

緯糸の素材

経糸ほど緯糸(よこいと)はまとまった長さを必要としないため、素材としては自由度が高くなり、絹・和紙・金銀糸・金銀箔の他、螺鈿(貝)・フィルムといった素材も使われています。また当社では、革やホースヘア(馬の尻尾の毛)などの変わった素材を織り込むこともあります。

箔糸を緯糸に織り込む。箔糸とは、和紙に金銀箔や漆、薄くはいだ貝などを貼り、糸状に裁断したものをいう。

袋帯誕生の歴史

帯そのものの歴史をさかのぼれば、縄文時代にまで遡ってしまうので今回は割愛しますが、帯の役割は当初、着物(のようなもの)を体に固定するためのものだったため、形状は単純な紐だったようです。
時代は近世まで進むと、江戸時代の中期~後期ごろ、当時流行った細身シルエットの小袖の着崩れを防ぐために帯幅が広くなったと言われています。そして幅広い帯を着用する流れから、袋帯の前身となる「丸帯」が誕生しました。丸帯は織られた状態で幅約68cmと広く、半分に折って仕立てて着用するものです。
裏も表も柄があるため、どのような結び方をしても柄が出る豪華な丸帯は、華やかさの反面、柄を織り出すために使う糸量が多く、芯の重量も加わって、とても重たくなってしまいます。重さがあるため着ているのも大変ですが、結ぶのも重労働で扱いにくいということもあり、さらに時代が経過すると、利便性・経済性の両面から丸帯は簡略化の流れを見せはじめました。それが袋帯の誕生です。重さ = 格 と考えられていた時代には、丸帯がステータスでもありましたが、袋帯は時代を追うごとに一般に受け入れられるようになりました。

大正時代に出現した袋帯も、昭和に入り需要が増えたことで当社も多く生産するようになりました。「丸帯」は、特別な機会に装う帯として完全に廃れたわけではなく、 数量は限られていますが、 現在でも生産されています。

川島織物セルコンの本社に併設の川島織物文化館でもいくつか丸帯を所蔵しており、時おり公開しています。
現在開催中の「昭和のはじめを駈け抜けた とっておきの一着」展(~2023年1月31日まで)では、きもの研究家 草柳アキさんから寄贈いただいた品の中でも贅を尽くした丸帯を公開していますので、よろしければ足をお運びください。

昭和のはじめを駈け抜けた とっておきの一着(川島織物文化館)

会期開催中 〜 2023年1月31日(火) (予定)
会場川島織物文化館
休館日土・日・祝祭日、夏期、年末年始
(川島織物セルコン休業日)
入館料無料、完全事前予約制
関連情報展示情報
昭和のはじめを駈け抜けた とっておきの一着 チラシ
昭和のはじめにみられる着物文化に思いを馳せて(KAWASHIMA Stories )

次回は袋帯の結び方や買い方、お手入れ方法など少し進んだ内容についてご紹介します。是非ご期待ください!

ご案内

ご意見・ご感想募集中!

「こんなことが知りたい!」というご要望や、ご意見・ご感想などがございましたら、こちらよりお問合せください。
帯に関するお困りごとにつきましても、ご相談をお受けいたします。

和つなぎラボ(川島織物セルコン)ウェブサイトオープン!

「和つなぎラボ」は和装に関わるメーカーとして着物を通じた体験のお手伝いができればと考えています。
こちらより情報発信や着方教室の案内を行っています。是非ご覧ください。
和つなぎラボ ウェブサイト 

和つなぎラボ Facebook

関連記事
帯メーカーが徹底解説! 帯の種類・寸法・格・着物との合わせ方
帯メーカーが徹底解説! 着物の帯の種類・名古屋帯編

NEW ARTICLE