
11カ国の帯をつくりました。KIMONOプロジェクト「イマジンワンワールド」
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和装に欠かせない「帯」には、さまざまな種類があります。代表的なものには、丸帯(まるおび)、袋帯(ふくろおび)、名古屋帯(なごやおび)、半巾帯(はんはばおび)、角帯(かくおび)などがあります。なかでも今回ご紹介する「袋帯」は、お子さんの入学式・卒業式や七五三、結婚式への参列など、人生の節目となるお祝いの席で活躍する帯です。「フォーマルなもの」というイメージをお持ちの方も多いもしれませんが、実は、柄や素材によっては、普段のお出かけにも締められる、活躍の幅が広い帯でもあります。
「袋帯って何?」「名古屋帯とどう違うの?」——そんな疑問に、帯メーカーである川島織物セルコンが基本から丁寧にご紹介します。帯選びの「最初の一歩」として、ぜひお役立てください。
目次
袋帯は、表地と裏地が筒状=袋のような形になった帯のことで、形に対してついた呼び名です。着用シーンはさまざまですが、まとめて「袋帯」と呼ばれています。一般的な結び方である「お太鼓(おたいこ)結び」にすると、背中部分の布が2枚に重なり、見た目にボリュームが出るのが特徴です。この「重なる」という形が「喜びが重なる」として縁起が良いとされ、お祝いの席などのフォーマルな場でよく使われてきました。一方で、色柄や素材によっては、カジュアルシーンでも楽しむことができます。
「自分のシーンには袋帯が必要?」と迷ったときは、下の表を参考にしてください。
| シーン | 袋帯(フォーマル用) ※金銀糸や吉祥文様が描かれている | 袋帯(カジュアル用) ※洒落袋帯や紬生地 | 名古屋帯 |
| 結婚式・披露宴への参列 | ◎ | △ | △(格による) |
| 入学式・卒業式(保護者) | ◎ | △ | 〇 |
| 七五三(保護者) | ◎ | △ | 〇 |
| 授賞式・式典・パーティー | ◎ | 〇 | △(格による) |
| 観劇・食事会 | 〇 | ◎ | ◎ |
| 普段のお出かけ | △ | ◎ | ◎ |
入学式・卒業式の保護者のきものには、訪問着や付け下げに袋帯を合わせるのが一般的でスマートです。「名古屋帯ではいけないの?」とよく聞かれますが、名古屋帯でも格の合うものであれば失礼にはなりません。(名古屋帯については「帯メーカーが徹底解説! 着物の帯の種類・名古屋帯編」をご覧ください)ただ、お祝いの場では「喜びを重ねる」二重太鼓の袋帯が、より華やかで場にふさわしい装いになります。迷ったときは袋帯を選んでおくと安心です。
儀式と呼ばれる場では、装いにも意味をもたせる文化があるため、ある程度のルールを知っておくことが大切です。一方、普段着のきものの世界では、ルールにとらわれず、現在は若い人たちを中心に和洋ミックスなど、新しい感覚の組み合わせが楽しまれています。こうした背景から、もともとはフォーマル用として作られた帯を、カジュアルなシーンで使うことも、ご自身が「素敵だ」「楽しい」と感じられるのであれば、自由にお楽しみいただくのが良いと、私たちは考えています。
それでは、フォーマルシーンとカジュアルシーンで袋帯をコーディネートした場合を比較してみましょう。

みやびな絵柄が描かれたベージュの訪問着に合わせたコーディネートです。帯には、縁起の良い吉祥文様として親しまれている「雲文様」に、能装束に見られる幾何学的な「割付文様」があしらわれています。きものと帯のどちらにも格調があるため、結婚式への参列や授賞式、パーティーなどの華やかな席にもふさわしい装いです。

濃い地色で紋を入れていない色無地に、「すくい織」と呼ばれる、ざっくりとした風合いの袋帯を合わせたコーディネートです。このような帯を川島織物セルコンでは「洒落袋(しゃれぶくろ)帯」と呼んでいます。
金銀糸を使わず、カジュアルな雰囲気のため、趣味性の高い訪問着や、紋の入らない色無地、小紋、紬(つむぎ)などに合わせて楽しむことができます。
お客さまからもっとも多くいただくご質問が「袋帯と名古屋帯の違い」です。
簡単に説明をしますと、袋帯は名古屋帯より丈が長く、結んだときに背中の「お太鼓」部分が二重になることから「二重太鼓」とも呼ばれ、フォーマルシーンで幅広く活躍します。それに対して、名古屋帯は袋帯よりも短く、「一重太鼓」と呼ばれ、二重太鼓にすることはできず、主にカジュアルな装いに用いられます。
| 袋帯 | 名古屋帯 | |
| 長さ | 長い(約448cm) | 短い(約380cm前後) |
| お太鼓の重なり | 二重太鼓 | 一重太鼓 |
| 主な用途 | フォーマル~セミフォーマル~カジュアル | セミフォーマル~カジュアル |
では、袋帯と名古屋帯の違いについて、①着た状態 ②仕立て上がった状態 ③仕立てる前の状態の3つのシーンで詳しく見てみましょう。

まずは着たときの状態の違いから見ていきましょう。左が袋帯(二重太鼓)、右が名古屋帯(一重太鼓)です。どちらも「お太鼓結び」をした姿ですが、よく見るとお太鼓部分の布の重なり(赤い部分)が違います。長さが違うので、着用時にはお太鼓部分の生地の重なりに違いが出ます。これが「二重太鼓」「一重太鼓」の名前の由来になっています。
仕立て上がりでの違いは、まず「長さ」で見分けるのが分かりやすいポイントです。袋帯は締めると二重太鼓になり、名古屋帯は一重太鼓になるので、長さは袋帯の方が68cm以上長く織られています。
名古屋帯の仕立て方は「帯メーカーが徹底解説! 着物の帯の種類・名古屋帯編」でもご紹介している通り、手先と呼ばれる部分の仕立てにいくつかのバリエーションがあります。そのため、長さで比較するのが、分かりやすい見分け方です。

店頭では、袋帯は畳んだ状態で陳列されていることが多く、名古屋帯は反物の状態で陳列されています。反物の状態はきもの用とよく似ているため、見分けがつきにくい場合は「幅」を確認してみてください。きものの反物は女性用が幅38cm前後、男性用が40cm前後です。名古屋帯の幅は31〜35cmのため、これより広ければきものの反物ということになります(リユース品は38cm以下のものもありますのでご注意ください)。判断に迷った場合は、お店の方に確認するのが確実です。
もう少し形状について説明していきましょう。袋帯は袋のような形(筒状)をした帯です。現在、幅が約31cm程度、長さは約448cm(川島織物セルコン規格)で製作しています。基本的に、表は柄があり裏は無地です。

織り上がったばかりの帯は、袋状になっており、この中に芯地を入れるなどして、開いている両端を丁寧に縫い閉じることで、私たちが目にする「帯」の形に仕上がります。
「袋帯」にはさらに「本袋帯」と「縫い袋帯」という区別があります。一見、同じ形状に見えますが、製作段階や仕立ての段階では、呼び分けることが多いです。一般的には「袋帯」で通用しますので、普段使うことは少ない言葉ですが、販売店などで耳にされたときに思い出してみてください。

本袋帯(図の左)は、初めから袋状に織り上げたもので、縫いしろがありません。そのため結ぶときに圧迫感が少なく、型崩れしにくいのが特徴です。縫い袋帯(図の右)は、表地に別の布を縫い合わせたもので、表地と裏地は同じ織組織の生地を合わせることが多いですが、裏面に絵柄がついている必要はないので無地であることがほとんどです。
現在は、縫い袋帯の方が本袋帯よりも生産量は多くなっていますが、当社では結びやすさや着心地などの良さから、主に本袋帯を製作しています。ただ、本袋帯は袋状に織り上げる構造上、製織中にキズやミスなどの確認がしにくいという難しさがあり、織り上げるには高い技術力が求められます。織りの技術者は、日々高い技術の習得と向上に努めています。
織物は、縦方向の糸(経糸・たていと)と横方向の糸(緯糸・よこいと)を組み合わせて製作されており、一般に袋帯の経糸には絹が使われています。絹以外では、金箔を貼った和紙を細く裁断した箔糸(はくいと)を経糸に使う「佐賀錦(さがにしき)帯」という帯もあります。また、一部では洗える帯として、ポリエステルなどの素材を使ったものもあります。
緯糸は、経糸ほどまとまった長さを必要とせず、素材としては自由度が高くなります。そのため、絹・和紙・金銀糸・金銀箔の他、螺鈿(らでん・貝を使った装飾)・フィルムなど、さまざまな素材が使われています。また当社では、革やホースヘア(馬の尻尾の毛)といった、変わった素材を織り込むこともあります。
このように織物の世界も進化を続けており、今後もさまざまな素材が織り込まれていく可能性があります。

帯の起源は、縄文時代にまでさかのぼりますが、当初は、きもの(のようなもの)を体に固定するための、単純なひも状のものでした。江戸時代の中期から後期になると、諸説ありますが、細身シルエットの小袖が流行し、着崩れを防ぐために、帯の幅が広くなったと言われています。この流れから生まれたのが、袋帯の前身となる「丸帯(まるおび)」です。
丸帯は織り上がりの状態で幅約68cmと広く、これを半分に折って仕立てて着用します。表裏どちらにも柄があるため、どのような結び方をしても豪華な柄が出るのが特徴です。その一方で、柄を織り出すために多くの糸を使い、さらに芯の重量も加わって、とても重たくなってしまいます。こうした不便さから、利便性・経済性の両面から丸帯は簡略化の流れが生まれ、誕生したのが「袋帯」です。かつては「重さ=格」と考えられていた時代には、丸帯がステータスでもありましたが、袋帯は時代を追うごとに一般に受け入れられるようになりました。大正時代に登場した袋帯は、昭和に入ると需要が高まり、当社でも多く生産するようになりました。一方、丸帯も完全に廃れたわけではなく、特別な機会に装う帯として現在でも、限られた数量ながら、生産が続けられています。
川島織物セルコンの本社(京都左京区)に併設されている川島織物文化館では、丸帯もいくつか所蔵しており、時折展示公開しています。展示内容は企画により変わりますので、最新の展示情報をご確認のうえ、ぜひお立ち寄りください。

| 場所 | 川島織物文化館 京都市左京区静市市原町265(株式会社川島織物セルコン内) |
| 休館日 | 土・日・祝祭日、夏期、年末年始 (川島織物セルコン休業日) ※土日祝の開館日もございます。詳しくは当館HPの「見学・ご利用案内」をご確認ください。 |
| 入館料 | 無料、事前予約制 |
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