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移ろいの中で紡ぐ景色の物語 – 四神が司る京都 – ミラノデザインウィーク2022を振り返って 

移ろいの中で紡ぐ景色の物語 – 四神が司る京都 – ミラノデザインウィーク2022を振り返って 

イタリア・ミラノで毎年開催される「ミラノデザインウィーク」。世界中からデザインに関心の高い人々が集まる世界有数のイベントです。
川島織物セルコンは、2022年6月に開催されたミラノデザインウィークに出展しました。

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例年4月に開催されるミラノデザインウィーク。2022年は新型コロナウイルスの影響から6月に開催されました。川島織物セルコンは「移ろいの中で紡ぐ景色の物語 – 四神が司る京都 –」をテーマに、京都と京都を守ってきた四神をインスタレーションで表現しました。
長旅を終え、ようやくミラノから京都へ戻ってきた四神とオブジェは、現在、川島織物セルコンの本社(京都市左京区)でご覧いただけるようにしています(要予約 下部関連情報参照)。どのようにこの展示を作り上げたのか、改めて振り返ってみました。

川島織物セルコン 本社での展示

ミラノデザインウィーク 2度目の挑戦

今回の出展は2回目で、初めてミラノデザインウィークへ出たのは2019年のこと。光の当たり方によって表情を変えるファブリックでインスタレーションを実施しましたが、右も左もわからない状況で酷評されることも想定し、まさに “乗り込んだ” という状況でした。

2019年の展示「 百花 craft ⇄ industry

多くの方が ”WOW!” と言いながら写真を撮ってくださいました。
初めての経験に圧倒される事ばかりでしたが、
 ・来場者のアートへの関心が高いこと
 ・ファブリックへ興味を持たれる方が多いこと
 ・我々の想像以上に京都は知られていること
などがわかりました。
そして、当社のファブリックに関しては、光の当たり方によって表情を変えたところに高評価をくださったのだろうという思いを抱き帰国しました。

そして2回目のトライへ向けて、決断したのは、
 ・光で表情を変えるファブリックを進化させ、再度来場者の評価を伺う
 ・京都の企業であることを伝える
 ・伝統的な織物と機械で量産する織物の両方ができることを伝える
ということ。
まず「京都」を表現するために、京都について考えてみました。
京都と言えば思い浮かぶのは、神社仏閣、和装、舞妓・芸子、京料理、和菓子、伝統工芸・・・。どれも間違いではないけれど、織物屋がミラノデザインウィークで表現する題材としては、しっくりこない。京都の心や想いを表現するにはどうしたらよいのだろうか。
色々な考えを巡らせ、京都を古来より守ってきたとされる神話上の霊獣「四神」(青龍、白虎、朱雀、玄武)をテーマにすることとしました。

そして、アートディレクションは AtMa inc.(アトマインク 以下、AtMa)。2019年のミラノデザインウィークで担当されたていたインスタレーションが素晴らしく、当社から是非にとお願いをしました。

モノづくり

四神を織る -昭和初期のアーカイブから

まず取り掛かったのは四神の制作。当社が所蔵している昭和初期の四神のデザインをリメイクすることとしました。まず、当社のデザイナーが現代にあうようにリデザイン、そして設計者がミラノに京都を再現するための四神によりふさわしい素材と織り方を決定していきました。

昭和初期にかかれたアーカイブ(左が玄武、右は朱雀)

そして、唐織の青龍・西洋風綴織の白虎・綴織の朱雀・紋ビロードの玄武という個性豊かな四神が完成。

上段 左:青龍 右:玄武
下段 左:朱雀 右:白虎

四神が司る京の風景

アートディレクションを担当することとなったAtMaは、四神が司る京都とその中にある京都の町、これらの風景全体をインスタレーションで表現することを考えられました。

四神それぞれが司る川(東の鴨川)、道(西の山陰道)、池(南の巨椋池)、山(北の船岡山)からインスピレーションを受け、それぞれの風景を光るファブリックのデザインを製作、オブジェの形に落とし込んでいきました。

オブジェに貼る生地は、見る角度で色が変わります。川島織物セルコンと四神の司る川・道・池・山、それぞれの歴史の背景を拾って、物語を紡ぐ思いでデザインしました。(AtMa)

次にAtMaから提示されたファブリックのデザインを、川島織物セルコンの織設計者が織物に落とし込んでいきました。今回制作したファブリックは、光の当たり方で見え方が変化することに加え、柄が2m以上と大きいことが特徴です。(普段製作するカーテンの柄は長くても1m程度が殆ど)

普段使わない糸を使って、大きな柄を作るので、データ量も大きくなるし、何度も色々な事を試しました。
(設計担当)

また、織物には得意な表現と不得意な表現があり、デザインを修正していただく事もありました。
試作をしてはチェックをしてもらい、修正してまた織り直す・・・。何度も京都の工場まで足を運んでいただき、少しずつ精度を高めていきました。

左:京都の風景(北:船岡山)の製織
右:玄武を紋ビロードで製織

そして最後に、現地の明るさを想定して、モックアップ実験。光り方、透け具合等の確認です。

耀彩織物
この風景を表現するファブリックは、見る角度によって色が変わる。多層フィルム糸を多く織り込んで色の変化を表現したのだが、これをきれいに織り上げるのが難しい。
織物に使う糸の多くは断面が円形だが、このフィルム紙は断面が扁平。扁平の糸を裏返ったり折れたりしないように織らなければ、美しい織物にならない。
西陣に古くから伝わる技法に「引箔」というものがある。金箔、銀箔などを和紙に貼って0.5mmくらいの太さに裁断し、糸のように織り込んでいく方法だ。帯などに一本一本手作業で織り込んだりする。この方法で培った経験を活かし、糸の扱い、織の組織などを工夫し、扁平の糸を大量に織り込む事に成功した。
参考:耀彩織物

ミラノ最古の文化協会の図書館でのインスタレーション

今回、インスタレーションの会場に選んだのは、ミラノ最古の文化協会施設「Circolo Filologico Milanese」の図書館。高い天井の部屋に壁一面に設置された書棚には、歴史を感じさせる書物がびっしりと並んでいます。

歴史や物語が詰まっている場所だったので、そこから川島織物セルコンの京都の物語が飛び出してきている模様を表現し、来場者は物語の中に入ってインスタレーションを体感してもらうことを目指しました。
(AtMa)

見る角度によって見え方が変わるファブリックで、移ろいゆく季節、移ろいゆく人の感情・・・そんな事も感じていただければとの思いで、インスタレーションを完成させました。

アートディレクションを担当くださったAtMaの二人は、最後にこんなメッセージを寄せてくれました。

職人による伝統ある手織り、新しいアイディアに挑戦する機械織り、その二つの技術を用いて川島織物セルコンにとってゆかりのある「四神が司る京都」の物語を、織物がつくる風景を通して表現した。過去から受け継ぐ文化や伝統と、新しい技術を掛け合わせた多様な表現のオブジェ達は、 無数に色や表情を見せその移ろいから、見る人に情緒的な感情を引き起こすだろう。
デジタル情報やモノが溢れる時代だからこそ、 精度の高い織りが作り出す圧倒的な物質の存在と、そこに詰まった物語を感じて欲しい。 物語があるものこそが人に伝わるものになっていくのではないだろうか。 移ろいながら続く景色の物語。
鈴木 良 / 小山 あゆみ(AtMa inc.)

イベント概要

タイトル英題:WOVEN NARRATIVES – Kyoto, the landscape of Four Symbols –
邦題:移ろいの中で紡ぐ景色の物語 – 四神が司る京都 –
開催期間2022年6月7日(火)〜12 日(日)
会場Circolo Filologico Milanese 2F 8B
https://filologico.it/
  住所:Via Clerici 10, 20121 Milano MAP
展示面積約75㎡
Art Direction /
Installation Design /
Pattern Design
鈴木 良 / 小山 あゆみ(AtMa inc.)
Graphic Design杉森 裕介(apart-apart inc.)
Lighting Design岡安 泉(岡安泉照明設計事務所)
Exhibition CooperationKOYA JAPAN Lighting 株式会社

担当者の声

川島織物セルコン マーケティング部 板東祐輔

― クラフトとインダストリー

今回、来場くださる方に伝えたかったのは、当社がクラフト(伝統技術)とインダストリー(量産技術)の双方を持ち合わせていて、多彩なファブリック表現が出来るという事。そこで、西陣織に伝わる技術のひとつ「引箔」からインスピレーションを得た織物で京都を表現しました。
これは2019年に初めてミラノデザインウィークへ出展した際にも使用した技術ですが、とても良い反応をいただけたので、織表現などをさらにアップデートさせました。

― 戻ってきたのね!

今回も多くの方が写真や動画を撮影して下さり、評価を頂けたのではないかと考えています。「戻ってきたのね、前回の展示とても印象的だったけれど、今回も素敵ね」「Kawashima? 2019年にも出てたわね」などとお声かけいただいたときは、とても嬉しかったです。
ただ、展示を見て、そういえば・・・と思い出して下さったというのが大半だったのは否めません。ミラノデザインウィークにお詳しい桐山登士樹さんからも、「日本には暗黙知があるが、イタリアには無い。川島織物セルコンのモノ・技術はスゴイが、自分たちの本当の強さをどうすれば現地で理解されるのかのシナリオの組み立てはもう少ししっかりさせては」とのアドバイスをいただきました。いつの日にか「川島織物セルコンがミラノに来るなら見に行こう!」と思っていただけるようになるようになりたいですね。

― 変わりゆく状況への対応

今回は、新型コロナウイルスの対策や、様々なものの値上げ、物流状況の変化など、めまぐるしく変化する状況への対応が大変でした。展示物は無事につくのか? 現地入りするスタッフが搭乗予定の飛行機は予定通り飛ぶのか? 帰国前のPCR検査等々・・・。
色々ありましたが、今となっては良い経験、良い思い出です。

関連情報

ミラノデザインウィーク2022 展示見学のご予約

現在、ミラノデザインウィーク出展のインスタレーションを、川島織物セルコンの本社(京都市左京区)でご覧いただけます。
見学をご希望の方は、前日までにお電話でご予約をお願いします。

電  話075-741-4323(ご予約専用)
営業時間午前10時~午後4時30分
休業日土・日・祝日、ゴールデンウィーク・夏季・年末年始など

WOVEN NARRATIVES – Kyoto, the landscape of Four Symbols – 特設サイト

https://www.kawashimaselkon.co.jp/event/milan2022/

Web勉強会 第6回 ミラノデザインウィークの今
桐山登士樹氏 AtMa inc.

10年以上にわたり、LEXUS、Grand Seikoなど多くの企業のミラノディンウィーク出展のブランディングを手がけてきた 桐山登士樹 氏と、2022年川島織物セルコンの展示を手掛けた若手デザイナー AtMa.inc の目を通したミラノ・デザインウィークの現地レポートです。

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