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立命館大学アートリサーチ・センターと川島織物セルコン、 伝統織物の知的基盤形成に向けた共同研究を開始

デジタルアーカイブによる文化資源の保全と技術継承を加速
新学部(デザイン・アート学部)を軸とした地域連携・人材育成の広がりにも注目

立命館大学アート・リサーチセンター(所在地:京都市北区、センター長:赤間亮、以下「ARC」)と、創業182年の西陣織メーカー、株式会社川島織物セルコン(所在地:京都市左京区、代表取締役社長:光岡朗)は、同社が創業当時より制作した図案や織物のデジタルアーカイブ化と活用に関する共同研究契約を2025年10月10日に締結いたしました。

本共同研究において、立命館大学ARCは、川島織物セルコンが明治から昭和中期にかけて制作した帯の図案約5,000点を高精細デジタルデータとして記録し、長期的保存と利活用を可能にする知的基盤の構築を目指します。また、明治22(1889)年に開館した染織文化とデザインを紹介する日本最古の企業博物館「川島織物文化館」が所蔵する染織品のデジタルアーカイブ化も予定しています。

ARCによる「川島織物・帯図案アーカイブ」。2025年11月現在、約1,230件がデータとしてアーカイブされている。

これにより、史料の物理的劣化や散逸のリスクを大幅に低減し、体系的な整理や研究分析を実現します。川島織物セルコンは、長年蓄積してきた膨大な図案・織物資料をデジタル化することで、貴重な文化遺産を安全かつ持続的に保存し、次世代に継承することが可能になります。また、過去の意匠やその表現技法を理解し、現代的なデザインや製品開発に応用する創造的基盤にもなります。

江戸時代に制作された繊細な漆工芸品をもとに、山々の重なり合った様子の遠山文を背景に、金調子に表現した高雅な趣きの松・竹・梅・菊・萩・桔梗を配した、色留め袖や黒留袖に好適な帯用の図案。

今後は2026年4月に開設予定の立命館大学デザイン・アート学部・研究科の教育とも密接に連携していく予定です。同学部・研究科は「美的感性の涵養」と「創造と社会実装を結ぶ人材育成」を教育理念に掲げ、京都の文化資源を最大限に生かした体験型・現場接続型の学びを重視しています。創業182年の歴史を持ち、日本を代表する織物メーカーである川島織物セルコンとの連携は、この理念を具体的に体現化していくものであり、学生は、川島織物セルコンの本社工場を訪れ、図案制作や製織技術に触れることで、織物への深い洞察を得ることができます。さらに、ARCが蓄積するデータと企業の現場が結びつくことで、伝統文化に基づく新たな創作研究が可能となり、学びの幅が大きく広がります。学部開設前から研究協働を始めることで、新学部・研究科の開設初期から教育・研究・地域連携を加速できる体制を整えることを企図しています。

立命館大学ARCと川島織物セルコンは、伝統文化の保存と創造的活用を両立する産学連携モデルを構築し、京都の文化資源を未来へつなぐとともに、その成果を社会に発信し、「地域に根ざし、世界へ開く知の拠点」 として、教育・研究および地域社会への貢献を一層強化してまいります。

■立命館大学アート・リサーチセンターについて

立命館大学アート・リサーチセンター(ARC)は、人類が持つ文化を後世に伝達するために、芸術、芸能、技術、技能を中心とした有形・無形の人間文化の所産を、歴史的、社会的観点から研究・分析し、記録・整理・保存・発信することを目的としています。総合大学の研究所として、文理融合・連携を前提とし、異分野の研究者の英知を集結させて、人文学研究では珍しい共同研究やプロジェクト型研究を京都を主な拠点として展開しています。

■株式会社川島織物セルコンについて

1843 年に京都で創業し、今年183年目を迎えた織物メーカー。熟練の職人による伝統的な手織り技術に加え、現代ならではのテクノロジーを駆使した機械織りも積極的に取り入れ、文化の継承と未来へつながる技術革新の探求に力を注いでいます。京都の本社には、企画・デザインから染め・織りまで一貫生産を手掛ける織物の製造工場、歴史的価値の高い作品を所蔵する「川島織物文化館」、次世代に織物技術を継承する「川島テキスタイルスクール」を併設。織物文化の継承と発展、そして発信に努めています。

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