1889年、パリ万博———。そこから、川島織物セルコンの挑戦の歴史がはじまります。
私たちは創業以来、さまざまな活動を通じて織物と向き合い「記憶に残る、織と美。」を追求してきました。その一つが万国博覧会で、当社は、
1889
年のパリ万国博覧会への出品以来、シカゴ、セントルイス、リエージュなど数々の万博へ出品し、新しい織物を発表することで織物の可能性を探求し続け、技を磨いてきました。
このたびの「大阪・関西万博」においても、織の極みを目指す姿勢を継承し、賓客の接遇施設である迎賓館をはじめ、
EXPO
ホールやパビリオンなどに多種多様なファブリックや床材を納めています。
長年培ってきた伝統の織技術と現代的な感性が生み出す、美しい空間の数々をお楽しみください。
Sponsored products川島織物セルコン協賛タペストリー

Photo by Yuki Moriya 守屋友樹
時代を織り直す(勇気と好奇心についての考察)
2025
H421.0 x W1,370.0 x D30.0 cm
資料提供:大阪歴史博物館、川島織物文化館
制作・協賛:川島織物セルコン
迎賓館(バンケットルーム)
左右の織物の中には、鎖国時代(16~17世紀)に描かれた日本地図と世界地図、18世紀末の大阪の様子(四ツ橋、心斎橋筋、唐物屋)、日本初のパスポートに残された政府の押印と受給者の身体的特徴、西洋の時刻制度学習のためのイギリスの時計(明治元年)、日本近代織物の礎を築いた川島織物の商標や織物図案(明治時代)、二代川島甚兵衞の筆跡(19世紀末)、二代川島甚兵衞宛の手紙の差出人の文字、明治期の万博関連書類(20世紀初頭)、明治期の迎賓館「泉布観」外観図、現代のパスポートのICチップ、絵文字、@や© の記号、などが散りばめられている。 史実に記録されない「人間の未知なるものへの好奇心」や「他者へ開くことへの勇気」の鼓動を丁寧に選びとり、それらを一度解体し、織り直す。謎解きをするように、あるいは星座をつくるように、この作品を見てほしいと願う。(手塚 愛子)
Photo Gallery

Photo by Yuki Moriya 守屋友樹
迎賓館(織り途中・明治から令和へ)
2025
H402.0 x W903.5 x D13.0 cm
資料提供:大阪歴史博物館、藤本壮介建築設計事務所
制作・協賛:川島織物セルコン
迎賓館(バンケットルーム)
左は明治時代・大阪の迎賓館「泉布観」、右は令和時代の迎賓館(藤本壮介氏によるデザイン監修)。それぞれに配置されるのは、樹下動物文と連珠文を表す二つの上代裂である。上代裂には、7~8世紀頃にシルクロードを経由して伝えられた西方文様の影響が色濃く見て取れる。迎賓館に掛けられたこの二つの織物は、古代、近世、現代という悠久の時を経た日本の外交の軌跡を表している。 極東の島国である日本が、どのように世界に開き、外交をしていくのかという葛藤を表すかのように、二つの織物は敢えて「織り途中」である。明治と令和、それぞれの織り糸は左右を行き来して部分的に繋がり、それぞれの構成要素を分かち合う。 この織物は川島織物セルコンにより、伝統的な手織り技法「綴織」で織られている。織物職人が一時的に作業を止める際、「杼」を白い経糸に挟むことがあるが、その状態も再現する。(手塚 愛子)
Photo Gallery

Photo by Yuki Moriya 守屋友樹
手塚 愛子
Aiko Tezuka
1976年東京生まれ。ベルリンと東京の二拠点で作品制作を行う。 2001年武蔵野美術大学大学院油画コース修了(戸谷成雄氏に師事)。2005年京都市立芸術大学大学院油画領域博士(後期)課程修了(宇佐美圭司氏に師事)。2010年五島記念文化賞美術新人賞により渡英。その後文化庁新進芸術家海外研修制度により渡独。織られたものを解きほぐす作品を1997年より開始し、歴史上の造形物を引用、編集しながら新たな構造体を作り出す独自の手法により制作を続ける。日本をはじめオランダ、スイス、韓国、イギリス、ドイツ、シンガポール、中国、アメリカなどで展覧会を開催。主なコレクションに国立国際美術館、京都国立近代美術館、東京都現代美術館、オランダテキスタイル美術館、ベルリン国立アジア美術館、ハンブルク美術工芸博物館など多数。

Photo by Yuki Moriya 守屋友樹
CUT: C/U/T_CC-CM_I
2025
H200.0 x W900.0 cm
制作・協賛:川島織物セルコン
迎賓館(ダイニングルーム)
川島織物セルコンの綴織はフランスのゴブラン織を参考に発展したが、明治になり日本画の顔料が多色使いへと改良研究されることを目の当たりにし、絵画を織物で表現することに心がけていた二代川島甚兵衞は、綴織に多色使いを取り入れ、独自の色暈し技法を確立した。 このように国家間の交流と独自の文化によって発展した「多色使い」をテーマにしたタペストリーは、大阪・関西万博の迎賓館に相応しいと考え制作した。1800色に染め分けた糸で織り上げた本作は緻密な織物であり、近くで見ると手作業や素材のぬくもりを感じる。その美しさとやわらかな錯視効果を通じ、世界を完全に把握することは不可能であるという事実を鑑賞者と感覚として共有したい。(川人 綾)
Photo Gallery

Photo by Yuki Moriya 守屋友樹
CUN: C/U/N_dcxl-dclx_I / CUN: C/U/N_dcxl-dclx_II
2025
H64.0 x W66.0 cm
制作・協賛:川島織物セルコン
迎賓館(ダイニングルーム)
日本の伝統的な染織は、緻密な手作業の積み重ねによるもので、熟練の職人であっても微妙なズレが生じる。このズレは人の制御を越えた美しさをもつ。 同様に、対象と人の認知の間にも時にズレが生じる。三次元の世界は、網膜が捉えた二次元画像から脳が推測したものであり、視覚と認知のメカニズムは錯覚を生むことがある。現実とイメージのズレは、人は脳が加工した限定的世界を見ていることを示す。 私はグリッドをアクリル絵具で重ねて描くことで生じる微妙なズレにより、人の制御を越えた美しさを絵画上に表出させると同時にやわらかな錯視効果を生み出し、世界を完全に把握することは不可能であるという事実を鑑賞者と感覚として共有することを目指している。 本作は川島織物セルコンの錦織(紋織の一種)の技術により、その絵画を約30倍のサイズで再現したものである。(川人 綾)
Photo Gallery

LONGCHAMP / La Maison Ginza
川人 綾
Aya Kawato
1988年奈良県生まれ。京都府在住。神経科学者の父のもと、脳を通して世界を把握しているということを強く意識するようになる。京都で日本の伝統的な染織を学んだ後、パリ国立高等美術学校交換留学を経て、2019年東京藝術大学大学院先端芸術表現科博士後期課程修了。「制御とズレ」をテーマに、日本の伝統的な染織や現代の神経科学を背景にもつ、抽象的なグリッド状のペインティングを中心に制作している。近年展覧会は、東京オペラシティアートギャラリー、京都市京セラ美術館の他、パリやジュネーブでも開催。主なコレクションに、シャネル合同会社、東京藝術大学大学美術館。主な受賞歴に、2018年「野村美術賞2018」野村財団、2017年「2074、夢の世界グランプリ」コルベール委員会・東京藝術大学、 2016年「第11回TAGBOAT AWARD 審査員特別賞 小山登美夫賞」TAGBOAT。
迎賓館
- 基本設計
- 株式会社日建設計
- 実施設計・施工・監理
- 大林組・矢作建設工業共同企業体・株式会社日建設計
- デザイン監修
-
2025 年日本国際博覧会
会場デザインプロデューサー
藤本壮介/株式会社藤本壮介建築設計事務所 - 納入品概要
- 特注タペストリー(協賛)
迎賓館は一般来場者立ち入り禁止のため、会期中に作品をご覧いただけません。閉幕後、川島織物セルコン京都本社 市原工場内にて一般公開を予定しております。
Our products川島織物セルコン 納入品
EXPOホール「シャインハット」
- 施主
- 公益財団法人2025年日本国際博覧会協会
- 基本設計・監理監修
- 株式会社伊東豊雄建築設計事務所
- 実施設計
- 株式会社昭和設計
- テキスタイルデザイン
- 株式会社安東陽子デザイン
- 施工
- 大成建設株式会社
- 納入品概要
- 壁面装飾(特注ファブリック)
EXPOホールは2025年4月に大阪・夢洲で開幕する日本国際博覧会(EXPO2025)の催事のメイン施設として計画された約1850席を有するホールである。開閉会式をはじめとして、音楽、演劇、芸能、未来型エンターテイメントなどのさまざまなイベントが会期を通じて行われる予定である。 黄金に輝く直径67mの円形の大屋根と、荒々しい大地が立ち上がったような円錐状のボリュームの力強い姿は、現存する1970年大阪万博の岡本太郎による「太陽の塔」を彷彿とさせ、会場全体を繋ぐ交通機能である巨大な「リング」と対峙して、会場のシンボルとなる。宇宙と交信するように空に向かって広がるパラボラ状の大屋根は、EXPO2025が掲げる「いのち輝く未来」の象徴でもある。 ホールは、センターステージ形式を主として、客席と舞台が連続するワンスロープの円形劇場で、観客と演者が一体となった人々の生命力に満ち溢れた祝祭空間となる。内部は、内径50m、高さ約15mのワンルームで、壁面の全周が、天井から床に向かって徐々に曲がりくねる短冊状の布が連なった、艶やかな質感の白いカーテンで包まれる。また、床や客席の段床も徹底的に白で染められ、真白に霞んだような空間となる。外側から連続するような金色のお椀状の天井は「金色の折紙」を直接貼り付けることによって実現する。このカーテンを主として、床、天井を利用した大規模なプロジェクションマッピングが計画されている。 2025年という現代において「いのち輝く未来」を考えるとき、これまでの万博が傾倒してきたような最先端のテクノロジーや科学技術ではなく、むしろ人間が実際に身体で感じる「場所の力」や「ものの力」こそが重要だと考える。身体を通すことのないバーチャルな体験が日常化している現代において、我々は自身のいのちを感じることに鈍化している。実際にここに足を運び、身体で感じることで、訪れた人々に生きる力を与えられる建築を作り上げたい。(株式会社伊東豊雄建築設計事務所)
EXPO ナショナルデーホール「レイガーデン」
- 施主
- 公益財団法人2025年日本国際博覧会協会
- 基本設計
- 安井・平田設計共同企業体
- 実施設計・施工・監理
- 鴻池・安井・平田晃久グループ
- 納入品概要
- 空間装飾(短冊加工ファブリック)
オーストリアパビリオン
- 施主
- オーストリア共和国
- 納入品概要
- 特注カーテン(上野リチ・リックスデザイン)
Kawashima Selkon Textiles川島織物セルコン
川島織物セルコンは、明治期の万博への出品を契機に、時代に合った新しい「織り」への挑戦を繰り返してきました。
美の表現と織物の可能性を探求し、織物の進化/発展を目指し続けます。
History沿革
1843(天保14)年
初代川島甚兵衞、呉服悉皆業を創業 屋号を「上田屋」と称す
1886(明治19)年
二代川島甚兵衞、織物研究のため駐独特命全権公使 品川彌二郎子爵と共に渡欧

1888(明治21)年
明治宮殿室内装飾織物を謹製 カーテンなどの室内装飾業に進出

1889(明治22)年
万国博覧会(パリ)に初出展、金賞受賞 その後、シカゴ、セントルイス、リエージュなどで開催された万博に出展しさまざまな賞を受賞する

1913(大正2)年
オランダハ一グ平和宮殿の綴織壁面装飾 『晩春初夏百花百鳥の図(原画:菊池芳文)』製作

1914(大正3)年
神戸加納町2 丁目にレース専門店「近藤忠商店」を出す
1964(昭和39)年
京都市左京区 市原に本社工場を建設(本社 市原事業所)
2006(平成18)年
セルコンと合併し「株式会社川島織物セルコン」に社名変更
2013(平成25)年
歌舞伎座、フェスティバルホールに緞帳納入

2019(平成31 /令和元)年
ミラノデザインウィーク初出展
About私たちについて
川島織物セルコンは、1843
年に京都で創業した織物メーカーです。
古くは明治宮殿、近年では京都迎賓館や数々のラグジュアリーホテルに織物を納入するなど、その唯一無二のクオリティに高い評価をいただいています。熟練の技術者による伝統的な手織りに加え、現代ならではのテクノロジーを駆使した機械織りも積極的に取り入れ、文化の継承と未来へつながる技術革新の探求に力を注いでいます。
京都の本社には、企画・デザインから染め・織りまで一貫生産を手掛ける織物の製造工場、歴史的価値の高い作品を所蔵する「川島織物文化館」、次世代に織物技術を継承する「川島テキスタイルスクール」を併設。織物文化の継承と発展、そして発信に努めています。
株式会社川島織物セルコン
本社所在地:〒601-1192 京都市左京区静市市原町265
創業:1843年(天保14年)
事業概要:
【インテリア・室内装飾織物】カーテン、カーペット、壁装、インテリア小物などの製造販売・室内装飾工事
【呉服・美術工芸織物】帯、緞帳、祭礼幕、和装小物などの製造販売

Kawashima Textile Museum川島織物文化館

川島織物文化館は、染織文化とデザインを紹介する、日本最古の企業博物館です。
現在は、大阪・関西万博の開催を記念し「ゆめ織るEXPO
— 万博と織物の意外なつながり —」を開催しています。
明治期の万博資料をはじめ、このたびの大阪・関西万博の迎賓館に協賛提供したタペストリーの制作資料など、万博と織物について紹介しています。
展示情報 - Exhibition information
ゆめ織るEXPO ー 万博と織物の意外なつながり ー
1889パリから2025大阪・関西
【会期:2024年9月17日(月)~2025年10月31日(金)予定】
- Access
- 〒601-1123 京都市左京区静市市原町265株式会社川島織物セルコン内
- 開館時間
- 午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
- 休館日
- 土・日・祝日、ゴールデンウィーク・夏季・年末年始など当社休業日
同館は事前予約制です。
見学をご希望の方は、予めインターネットでのご予約をお願いします。